Salma

夕焼けに包まれた広場でBBQ大会の最中、ビール瓶を傾けながら、キャミソールを纏ったパレスチナ出身のSalmaと ーー 乾杯! パレスチナからドイツに移ってきたんだよね、今年で二十歳になったとこ 大学でコンピュータサイエンスを専攻してるんだ えっ?Gazaな…

Hedayatullah

ドイツ語の授業後の空き教室で、どんよりとした雪景色を見ながら、カブール出身のHedayatullahと ーー いやぁ、さっきはラップトップ貸してくれてありがとうね お陰でオンライン試験を受けることができたよ 高いからなぁ、なかなか買えなくてね 前にも言った…

Kamilah

賑やかな学食でランチを食べた後に、ヨーグルトやカップケーキをつまみながら、ペンシルベニア出身のKamilahらと ーー うん、最近はドイツ製戦車をウクライナに送るかどうか、ホットな話題だね ふうん、ドイツも過去の侵攻の歴史を抱えてるから、武器の輸出…

Lucia

中世には砦が聳えていたという、郊外の丘のてっぺんを目指し、牧草地の捲き道を歩きながら、ブレーメン出身のLuciaと ーー 週末は彼氏に会うために、片道8時間の列車旅だった 飛行機?は使わないよ 近距離、特に国内移動で飛行機は使いたくないんだよね フッ…

Pola

旧市街のクリスマスマーケットでグリューワイン飲みながら、ロストフナドヌ出身のPolaと ーー 今年の2月の少し前から、毎晩夜になると遠くでドォーン、ゴォーンという、聞き慣れない地鳴りの様な音が響いていてね その後ロシアが一方的に侵攻して、ウクライ…

Liren

日没後、食堂で夕飯を食べながら、雲南省出身のLirenと ーー どこでもベジタリアン用のメニューがあるのには驚くよね 試しに頼んでみたけど、なんだろ、これ 豆、卵、小麦を混ぜて焼いた分厚いパンケーキのような うん、ホウレンソウが入ってるね、ソースも…

Scrap and Build

この辺りの土地はゴミでできている コンクリート片、プラスチック、ビニール、金属、ワイヤー、およそ自然分解されることのない成分で構成されているこの土地は、後の世代が掘り返したときに、この地層が人新世(統)かと容易に見分けがつくに違いない 過去…

Cubao Expo

日本の高度経済成長期も、このような風景が広がっていたのかヘルメット知らずの作業員の手によって、ビルがニョキニョキ生えてくる マニラは街が若い 毎年来るたびに新しいマンションが建ち、都市高速道路が伸びており、目下は地下鉄やLRT新路線の工事現場か…

Tehran

褶曲山脈は教科書で習った通りであった 飛行機はペルシア湾岸からシーラーズの辺りまで横たわるザグロス山脈を横断していく これだから窓側に座らずにはいられない 寝不足であったが遂に一睡もせず、眼下に広がる乾燥地帯を読み解きながらテヘランに降り立つ…

Narita

その日、私には番号881が振られた ーー 日々、数千人が到着する。成田空港 ここでは、大量の日本人の若者や外国人が係員、誘導員として、パソナに雇われている アジア系の移民は、日本語を勉強する傍ら、母国から来日した同胞と話すことができるので理に適っ…

Amcorp Mall

コロナの影響を受け、SafeTravelの仕組みを用いてマレーシアに入国するには、二週間以上前に旅程を申請せねばならぬ 旅程の中には、移動手段(公共交通機関は禁止)、投宿先、移動時間、会合場所、面会相手の氏名や連絡先を記載してから渡航許可を得る必要が…

Singapore

当地の研究機関に勤めている友人を訪ねて、6年振りのシンガポール 蒲田で一杯やってから二時間後には搭乗して、起きたら着いているのだから近いものだ 東海岸公園で麦酒を飲みながら丸太に枕して、沖合に夥しく浮かぶタンカー船を眺める 実にゆっくりとした…

Stateless

初の渡米 ロサンゼルス国際空港で乗り継いで、ゴールドラッシュで栄えた加州々都サクラメントへ 羅府の郊外 こちらの大学に留学するという明治大生と路線バスに乗って同市内へ、州議会目の前に投宿 荷解きもそこそこに郊外へ歩き、初めて新大陸からの夕陽を…

Ceylon

自分の荷物がターンテーブルから出てこない 失望感が募り、いよいよやられたか、と諦める マニラに置いてきたらしい カタコトの日本語を話す恰幅の良いおばさん職員が対応してくれる 明日にはホテルに届けるから、安心して、とのこと Fort駅の構内 ついこの…

Far East

羽田から飛行機で二時間、夕方にウラジオストックに降り立つ この時間になると、市街地までの公共交通機関はない 皆、迎えの車にめいめい乗り込んでいく 10分もすると到着ロビーは静かになる 我々一行も手配済みのバンに乗り込んで、市内の安宿に向かう 草原…

Balandis

先日、シャウレイ南方に位置するクルトバネ自然公園にて、蛙の生息個体数調査を行ってきた。湿地を横断する形で道路が引かれているため、その環境影響評価の一環であるそうだ 班に分かれ、蛙を探す。大抵はヨーロッパヒキガエルである。そんな中、珍しい種を…

Kovas

私はこの街で一人の日本人である、と豪語していた。が、それは間違いであった。現在、私の知る限り、他に二人の日本人が滞在している 一人は、宣教師である。シャウレイに来る前には、マジェイケという小さな町で4年間、布教活動をしていたとか。先日、夕食…

Vasaris

曇天が続く。吹きすさぶ小雪。古着屋で安く購入した紺色の外套に身を包み、頭には黒のハンチング帽。足早に食堂に入る。黒縁の眼鏡が曇る。鍋を指差し、暖かいスープを注文する。付け合せの黒パンは堅い。見知りの店のおばさんが、割り引いてくれる。今月か…

Sausis

今月は末日まで冬季休業。講義は一切なく、勉強は疎かになっている。それらしいことと言えば、ロシア語の数詞を覚えたり、ソ連史関連の本を読んだり、といった具合だ 昼下がり、カフェに行き、一杯1ユーロの珈琲を注文。それをちびちび飲みながら、夕方まで…

Gruodis

シャウレイの夜は長い。毎週、友人が麦酒を携えて私の部屋に上がり込み、小一時間ほどかけてエンジンを温め、連れ立ってナイトクラブの扉を開け、美女と腰をフリフリ、草木も眠る時刻に帰寮し、嗚呼、柄にもないことをしたと、まんざらでもないような反省を…

Lapkritis

大抵の場合、留学生活2,3か月目でストレスが溜まってきて、帰国欲が高まります。と、聞いていた しかし今のところ、特にストレスを感じていない。苦難もない。カルチャーショックも受けていない。海外での長期滞在。この街に日本人はいない。何かしらの困難…

Spalis

「日本人は騙されている。本当のことを知らない。歴史上、権力者が都合の良いうように事実を作り上げてきた例は沢山ある。独島もそのひとつだ」と韓国人の友人が語気を荒げて言い放つ 時計の針は午前1時を指している。彼が私の部屋に来てから、もう3時間くら…

Rugsėjis

自分で持ち運べない重量となってしまうキャリーケースは美しくない旅行でも移住でも、身一つで持てる分だけで十分だ 8月末にこの国の首都であるビリニュスに到着した後、列車でシャウレイへ向かう 入寮。おっかない寮母さんはどこにでも居るのだ。学生寮は国…